基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの均衡を日本政府は目指していますね。
国の財政を健全化させるためにもプライマリーバランスが重要だ、というわけですが、
そもそも「プライマリーバランス」が成立している状況がどういう状況なのか?
理解されている方は少ないかと思いますので、解説します。
プライマリーバランスとは?
プライマリーバランス(PB)の定義は、財務省のHPに記載があります。
基礎的財政収支(プライマリーバランス)とは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用等)を除く歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費(社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費)を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標となっています。
https://www.mof.go.jp/faq/budget/01ad.htm
ざっくり言うと、国が使うお金と入ってくるお金のバランスを表したもの。
①入ってくるお金 → みんなが払う税金やその他の収入
②使うお金 → 道路を作る、病院を支えるなどの国のサービスに使うお金
(ただし、借金の返済や利息の支払いは含まない)
このバランスがどうなっているかで、国が借金に頼らずにやりくりできているかがわかります。
■黒字 → 入ってくるお金の方が多く、借金に頼らずにやりくりできている
■赤字 → 入ってくるお金より使うお金が多く、足りない分は借金に頼っている
つまり、「国がちゃんと自分のお金で生活できているか?」を示すものです。
PBの現状は?
財務省の「日本の財政関係資料(令和6年10月)」によると、日本を含む主要国のPBは
ここ10数年で以下のとおり推移。軒並みマイナスです。
これをプラス、つまり黒字化しようとしているのが政府です。
なんですが、ちょっとここで考えてみたいのが、
つまるところ、PBの黒字化って、国民にとっていいことなのか?
それとも悪いことなのか?ということ。
「黒字」という言葉のイメージからすると、会社で言えば
利益が出ている状態ですから、なんとなくよさそうなイメージですよね。
せっかくなので、これを会計的に示してみます。
登場人物は「政府」と「国民・企業」です。
会計目線から見たPB
確認ですが、PBが黒字ということは、「政府に入ってくるお金の方が多い」という状況です。
ここで「入ってくるお金」が何を指すかというと、シンプルに言えば税収ですよね。
反対に「使うお金」は、公共事業費や社会保障費といった、
インフラ整備や社会保障関連のことを指します。
ここで、黒字にするためには、収入を増やすか支出を減らすか、
あるいはその両方かしかありません。
収入を増やす、つまり増税。
支出を減らす、つまり公共事業費や社会保障費の削減。
前提として例えば、もともとの税収が100、支出が150だったとします。
これを仕訳に表すと、政府目線では
(借)現金 100 /(貸)税収益 100
(借)支出 150 /(貸)現金 150
となり、利益を計算するための決算書である損益計算書(PL)は
収益 100
支出 150
利益 △50
となり、赤字の状態ですね。
今度は、増税して、支出を減らした状態を考えてみます。
増税後の税収が150、削減後の支出が100だとすると
(借)現金 150 /(貸)税収益 150
(借)支出 100 /(貸)現金 100
となりPLは
収益 150
支出 100
利益 50
黒字化できました。
PBの黒字化をごくごく簡単に示すとこのようなイメージです。
PB黒字化が示す本当の意味
会計的に見て、確かにPBは黒字化され、政府の財政は健全になりました。
でも、ここで考えてみたいのが、この時の国民はどうなっている?ということです。
素直に考えてください。
増税されています。
公共事業や社会保障費が削減されています。
国民が得た所得がより多く政府に持っていかれ、
一方で国民のために使うお金が削られている状態なんです。
シンプルに、おかしいと思いませんか?
経済が過熱している状態ならば、まだわかります。
過熱している経済から、税金という形でお金を政府が吸い上げて、
過度なインフレを抑制するための調整弁として増税する。
これであれば納得です。
でも今って、経済過熱していますか?
景気は上向きですか?
インフレにしたって、需要が創出された結果として起こっているものですか?
そうじゃないですよね?
全然そんな状況じゃないですよね?
今の日本経済が置かれている状況がこうであるにもかかわらず、
なぜか政府はPB黒字化を声高に叫んでいるんです。
マスコミも、PB黒字化が達成できていないことを
さも悪いことのように報道しているんです。
PBを黒字化すること自体が悪いのではありません。
それ自体はあくまで手段の一つなので。
異常なのは、今の経済状況においてPBを黒字化することが
よい政策だというようがまことしやかにうたわれている状況なんです。
会計的な観点が見えていないと、いくら経済ニュースを読んでいたって、
この仕組みに気づくことが出来ないんです。
だから、基礎的な部分でも構わないので、会計教育が必要なんです。
そんな会計教育の場を、今年から少しずつ本格的に広げていければと。
焦らず、早く、ですね。
頑張ります。
~編集後記~
- 朝は仮アップされたリースコラムのレビューのコメント返しと、会計論点メールコンサルの
返信を。昼からはクライアントに往訪してIPO支援。クライアントへは自転車で片道25分くらい
だったので、いい運動にもなりました。 - 夜は新年一発目のフリーランス塾。先日の立川志の輔の落語の話から、伝え方を改めて
皆さんとで学びました。その後はいつもの懇親会へ。 - よくわからない距離感で見つめあっているうちの猫たち
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