今年の5月12日に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
(フリーランス・事業者間取引適正化等法)、いわゆるフリーランス保護新法が
来月11月1日に施行されます。
フリーランスを取引先として事業を行う企業にとっては重要な法律で、
下請法にはなかった規定も含まれています。
またIPOを目指すスタートアップの会社でも、コンプライアンスの観点から
対応が求められることになると思われます。独立会計士としてIPOコンサルを
請け負う場合も、こういった観点でのアドバイスができると強みになるでしょう。
今回はこの法律についてまとめてみます。
【「特定受託事業者」とは?】
法律の名前にもあるこの「特定受託事業者」。これがそもそも何か。
これは「業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの」を指します。
平たく言うと「フリーランスや1人会社の経営者」ということですね。
(このブログではまとめて「フリーランス」と呼ぶことにします)
【なぜこの法律が制定されたのか?】
中小企業を保護する法律として「下請法」がありますが、下請法には資本金基準があり、
資本金1千万円以下の事業者からフリーランスへの業務委託については対象としていません。
近年フリーランスが不利な立場での契約条件、業務委託をさせられている現状を受けて、
①フリーランスと発注事業者との間の取引の適正化
②フリーランスが働きやすい環境の整備
を目的に作られたのがフリーランス保護新法です。
特に②が下請法では規定されていなかった内容なので「当社は資本金1千万円を超えているから
今まで通り下請法だけ守っていればいい」と考えていると足元をすくわれます。
【この法律の対象になる発注事業者は?】
事業の形態やフリーランスへの業務委託状況によって、
義務が生じる発注事業者やその義務の内容が変わってきます。
具体的には、以下のフローチャートに基づいて判断します。
(義務項目番号の詳細については後述)
【発注事業者が負うべき義務の内容は?】
上記フローに従って発注事業者が負うべき義務の内容は以下の7つ。
1.書面などによる取引条件の明示
→給付(何を業務委託したか、ということ)の内容、報酬の額等を書面または電磁的方法で明示
2.報酬支払期日の設定・期限内の支払
→フリーランスからの給付を受領した日から60日以内の報酬期日の設定
「受領した日から」なので、検収行為の有無は問われません。
3.7つの禁止行為
→①フリーランスに責任のない給付の受領拒否
②フリーランスに責任のない報酬の減額
③フリーランスに責任のない給付の返品
④相場と比較して著しく低い報酬を不当に定める
⑤正当な理由のない発注事業者が指定する者の購入・利用の強制
⑥発注事業者のための金銭、役務その他経済上の利益の提供
⑦フリーランスに責任のない内容の変更またはやり直し
4.募集情報の的確表示
→ウソの表示をしない、正確かつ最新の情報に保つ
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮
6.ハラスメント対策に関する体制整備
7.中途解除等の事前予告・理由開示
→原則、中途解除日等の30日前までに予告
【違反したらどうなる?】
上記義務に違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は
違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令ができます。
命令に違反したり、検査を拒否したりすると、50万円以下の罰金です。
インボイス制度でフリーランスが苦境に立たされている中、
このフリーランス保護新法で少しでもフリーランスの地位が向上することを願います。
(じゃあそもそもインボイスを導入しないほうがよかったのでは…という気も)
独立会計士という立場からは、フリーランスに寄り添った
サービスの提供を行いたいものですね。
~編集後記~
- 朝はライター講座の宿題を。自分が購入した商品のセールスレターから、何がトリガーになって商品を購入したかの分析です。ターゲットをしっかり絞るのが大切ですね。
- お昼~午後まではIPOコンサル業務の成果物づくり。プロセスの業務記述書・フローチャートの書き出しです。
- 夕方は、家の近くに少し前にカフェができていたので試しに入店。雰囲気は悪くなく、ブレンドコーヒーの味もまずまずでした。ただやっぱりうちで豆から挽くやつを超えるコーヒーになかなか出会わず…
- 隙間時間でこのHPのプロフィールメンテを。ブログを何日継続したか数えてみたら、昨日の時点でnote時代から通算して174日でした。まだ半年も経過しておらず、1年がマイルストーンです。
なぜか窓際に密集しているうちの猫たち
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