学校の先生のお給料~教職調整額って?~

教育

11/3(日)の共同通信の報道で、公立学校教員に対して残業時間に応じた
手当を支払う仕組みが検討されているとの報道がありました。

公立校教員に残業代支給を検討 定額廃止案、勤務時間を反映(共同通信) - Yahoo!ニュース
公立学校教員の処遇改善を巡り、残業時間に応じた手当を支払う仕組みを導入する案が政府内で浮上、関係省庁が検討を始めたことが3日分かった。採用すれば、残業代の代わりに一定額を給与に上乗せ支給する現行の

……ちょっと待ってください。
「学校の先生って、残業代そもそも支給されてなかったの!?」
とびっくりされる方もいるかもしれませんね。

そこについて触れる前に、11/5(火)にこんな報道も。
これも同じ共同通信です。

給与特別措置法の廃止は考えず 文科相「合理性を有している」(共同通信) - Yahoo!ニュース
阿部俊子文部科学相は5日の閣議後記者会見で、公立学校教員の処遇改善を巡り、教員給与特別措置法(給特法)を廃止し残業時間に応じた手当を支払う仕組みを導入する案が政府内で浮上していることに関し「検討が

……どっちやねん、って感じですね。
まだ決まってないから一応否定しておいたのか、それとも
政府内でただ連携が取れていないのか、真偽のほどはわかりません。

ただ、この「教職調整額」という言葉については
知っておいてもいいんじゃないかと思います。

「教育調整額」とは?

法律でいうと「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
(通称、給特法)が根拠になります。

e-Gov 法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

その第3条第2項。

———————————————————————————————————
(教育職員の教職調整額の支給等)
第三条
2 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない
———————————————————————————————————

確かに、時間外勤務手当どころか休日勤務まで支給しない法律になっています。
これだけみると「やっぱり、学校の先生ってなんてブラックだ!」と
思うでしょう。

一方で、同条第1項にこんな記述があります。

———————————————————————————————————
第三条 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、
その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、
教職調整額を支給しなければならない
———————————————————————————————————

ここに出てきましたね。教職調整額。
毎月の給料の4%が教職調整額として支給される仕組みになっています。

「なんだ、形は違うけど別の手当てがあるんじゃないか」と思われたあなた。
よくよく考えてみてください。
もしご自身が、たくさん残業をして、翌月の給与明細を見たときに、
給与本体の4%しか残業代がついていなかったらどう思いますか?
暴れてもいい案件だと思いますよ。

先生たちの給料の実態

「でも他にもいろいろ手当てがあるんじゃ?」
「全体としてはそれなりの金額なんじゃないの?」

とも思ったので、その線も調べてみました。
以下は今年の4月9日の財務省の資料です。

出典:財務省 財政制度等審議会財政制度分科会 参考資料2-2

これによると
「教職調整額を含む教員に特有の手当等を合わせると、平均すれば
教員1人当たり残業18時間分の手当(給料の9%相当)が既に支給されている。
とありますね。
やっぱり他にも手当あるじゃないか、と一瞬は思います。

でも、ここで疑問が。
残業18時間分の手当てって、先生方の残業時間と比較して
十分なんでしょうか?

今度は文科省の令和4年4月4日の資料を見てみましょう。
厳密にいうと残業時間ではないのですが、参考になるデータとして
「在校等時間」というのがありました。

出典:文部科学省 教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(確定値)について

近年の「働き方改革」の効果も多少はあるのか、在校等時間は一応減少傾向。
大体平均すると、令和4年度で平日に10時間は学校に滞在しているようです。

教職員の方の就業時間はおそらく学校によっても異なるのではないかと推定しますが、
一般事業会社に置き換えて仮に9時間(1時間の昼休憩含む)が「時間内」だとすると、
1日の残業時間はは約1時間。月に20日働いて20時間。

加えて土日があります。
土日は1日あたりざっくり1時間だとすると、月に8日土日があって8時間。

結果、平日と合計すると28時間は毎月残業している計算になります。
18時間に10時間足りない結果となりました。

もちろんこの試算は公表数値をもとに私が簡便的にやっただけですから、
どこまで信ぴょう性があるか、というところです。
ただ、正味な話データに含まれていないけど現実は仕事をしている時間は
あるでしょうし、「学校の先生は待遇がよくない」という肌感覚と一致するのは確かです。
しかも近年学校の先生の業務上の負荷はますます増えているようですから、
本来はそれによってもお給料が見直されてしかるべきですよね。

教育次第で国が変わる

教育は、国の根幹です。
どんな教育が行われているかが、国の強さを決めると言ってもいいでしょう。
そんな大切な教育を担ってくださっている学校の先生方には、
少なくとも金銭的には十分な報酬をお渡ししないといけないですよね。

なお、この点に関して政府は、教職調整額を
13%に引き上げる方針を固めたそうです。
法案の提出は来年の通常国会を目指しているとか(1月に招集、会期は150日間)。
4%→13%、9%の引き上げは大きいですね。

公立学校教員の給与、上乗せ割合4%→13%に改善を 文科省が要求:朝日新聞デジタル
文部科学省は、公立学校教員に時間外勤務手当(残業代)を支給しない代わりに、一律に上乗せ支給している「教職調整額」について、現在の「基本給の4%」から「13%」とする方針を固めた。来年度予算案の概算要…

しかし、この給特法が制定されたのは昭和41年。
制定からすでに60年近くたってようやくの改正です。
正直、遅すぎると思います。
先の衆議院選挙は混迷を極めましたが、果たして
今後の学校の先生に対する待遇はどうなるのでしょうか?
不安でなりません。

本来は、子どもたちへどんな教育を行うべきかという
教育の中身を議論すべきではありますが、残念ながら
それ以前に越えなければならないハードルがあるのも事実。
少しでも日本の教育制度が改善されるのを願うばかりです。

~編集後記~

  • 月次決算支援第3営業日目。現場の方からの資料の出が遅くややビハインドといったところ。
    加えて毎度お決まりのようにあるイレギュラー対応も行いました。
  • 朝クライアントオフィスのそばに猿田彦コーヒーがあり、朝はそこで事務作業をしています。
    アプリでスタンプが溜まったのでドリップコーヒーをもらいました。旅行に行くときにでも
    持って行ってみようと思います。
  • 他の猫が愛でられているのを真ん丸な目で順番待ちしているうちの猫
ずっと並んでるんですけどー(みっちゃん)

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