企業会計基準委員会(ASBJ)は、2024年9月20日に移管指針公開草案第15号「金融商品会計に関する実務指針(案)」を公表しました。前回の改正が2022年10月28日でしたから、約2年ぶりの改正ですね。
今回の改正は、「組合等への出資」に関する取扱いです。
そこまでドラスティックな改正ではない印象ですが、ベンチャーキャピタルファンドの出資持分を
保有している上場会社等において会計処理に影響が出る可能性があるので、
お心当たりのある経理ご担当者の方は要チェックです。
コメントの募集期間は2024年11月20日までとなっています。
【改正に至った背景】
この改正は、ここ最近ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加していることが
背景にあります。改正に至った経緯をまとめると下記のとおりです。
- これまで市場価格のない株式は取得原価で評価されていた(金融商品に関する会計基準第19項)。
- これを時価評価することで、ファンドにおける財務諸表の透明性が向上し、投資家への有用な情報が開示および提供されることになる。
- 特に、ベンチャーキャピタルファンド等への成長資金供給促進の観点から、市場価格のない株式の時価評価に関する会計基準の改正要望が高まっていた。
【改正の目的】
この改正は、上場企業等が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に係る会計上の取扱いを見直すことを目的としています。
※ただし、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を中心とする範囲に限る。
【公開草案のポイント】
1.組合等への出資の会計処理
① 以下の要件をいずれも満たす組合等(※)への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とできる
- 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
- 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること
※ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等に関する直接的な定義は行われていない
② ①の定めを適用した場合、時価評価に伴う評価差額の持分相当額は、純資産の部に計上する
③ ①の定めの適用に当たり、組合等への出資者である企業は、①の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に①の定めの適用対象かどうか決定する(出資後の取りやめは不可)
④ ①の定めを適用した場合、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(金融商品会計に関する実務指針第92項)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(同第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。
2.注記事項
① 1.の定めを適用する組合等への出資については、時価の算定に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第31号)第24-16で定める事項の注記(★)に併せて、次の事項を注記
※連結財務諸表で注記していれば個別財務諸表では注記不要
- 1.の定めを適用している旨
- 1.定めを適用する組合等の選択に関する方針
- 1.の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額
★:貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記
3.適用時期
強制適用:20XX年4月1日(確定後の改正実務指針が公表されてから1年程度経過した日を想定)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首
任意適用:20XX年4月1日(確定後の改正実務指針が公表後最初に到来する年の4月1日を想定)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首
4.経過措置
① 適用初年度の期首に1.の定めを適用した際に生じた評価差額の持分相当額は、適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する
② 適用初年度の期首に1.の定めを適用した際に生じた減損処理による損失の持分相当額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する
5.最後に
数年前の「時価の算定に関する会計基準」の適用含め、取得原価会計から時価会計へのシフトが
大きく進んでいます。時価会計を採用することにもメリット・デメリット双方ありますので、
自社にとって何か望ましい会計処理かをよく見定めたうえで、会計処理方針の選択を
行っていただければ幸いです。
【SNS】フォローお願いします
- X(旧Twitter):会計・その他気づきの発信
- Instagram:日々の自己研鑽を発信
- note:旧ブログ。