【会計コラム#001】後発事象に関する会計基準等の解説

2026年1月9日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業会計基準第 41号「後発事象に関する会計基準」等を公表しました。

企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」等の公表

これまで監査基準報告書という監査上の指針に委ねられていたルールが正式な会計基準へと移管され、国際的な会計基準との整合性がさらに高められています。今後の適用に向け、実務担当者が押さえておくべき主要な変更点等について解説します。

(凡例)
■基準:企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」
■適用指針:企業会計基準適用指針第35号「後発事象に関する会計基準の適用指針」

 

1.基準公表の背景

従来、日本には後発事象に関する包括的な会計基準がなく、監査・保証基準委員会 監査基準報告書 560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」(以下、「監基報 560実1」)に基づいて実務が行われてきました。

そのような状況の中、会計基準の体系の完全性を高めつつ、国際的な会計基準との整合性を図るため、実務指針から会計基準委員会(ASBJ)へ内容を移管するプロジェクトにより公表される運びとなっています。

なお、当該監基報 560実1については、基準公表と同日で廃止が決定されています。

監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」の廃止について

 

2.後発事象とは?

(1)定義

「後発事象」とは、下記のとおり定義されています(基準第4項)。

 

決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象のうち、評価期間の末日までに発生した事象をいう。

 

なお、連結財務諸表においては、「決算日後」を「連結決算日後」と、さらに、連結
子会社及び持分法適用会社(以下「連結子会社等」という。)については、「連結決算日後」
を「連結子会社等の決算日後」と読み替えます(基準同項)。

この後発事象には2つの分類があり、企業の財務諸表を修正すべきか否かという観点で「修正後発事象」と「開示後発事象」の2つに区分されます(基準第5項および第6項)。

 

【修正後発事象】
決算日後に発生した事象ではあるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断又は見積りをする上で、追加的又はより客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない事象

【開示後発事象】
決算日後において発生し、当期の財務諸表には影響を及ぼさないが、翌期以降の財務諸表に影響を及ぼす事象

 

ここで、上記後発事象の定義でいうところの「評価期間の末日」とは具体的にいつのことを指すのか?という点が問題になります。

 

3.評価期間の考え方

(1)原則

後発事象の定義における「評価期間の末日」とは、原則として、財務諸表の公表の承認日とされています(基準第7項)。そしてこの「財務諸表の公表の承認日」が具体的に下記を指すと考えられてい(基準BC22項)。

 

財務諸表を公表することを承認する適切な権限を有する社内の機関又は個人が公表を承認した日付
※当該承認を行う権限を有する者は、企業ごとに異なり得る

 

従来の実務(監基報560実1)では「監査報告書日」までとされていましたが、以下の理由から国際的な会計基準(IAS第10号「後発事象」)に合わせる形で見直されています(基準BC15項)。

 

  • 財務諸表の利用直近までに発生した事象を反映させることが、利用者にとって有用であるため
  • 国際的な会計基準(IFRS)との整合性を図るため
  • 我が国のサステナビリティ開示基準における取扱いと整合させるため

(2)会計監査人設置会社における特例

会計監査人設置会社が作成する会社法上の計算書類および連結計算書類については、実務上の混乱を避けるための特例が設けられており、評価期間の末日は「確認日」とされています(適用指針第4項)。

この「確認日」は、企業が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準及び会社計算規則に準拠して計算書類等または連結計算書類(以下、まとめて「計算書類等」)を作成する監査契約上の責任を果たしたことを確認した日を指します(適用指針BC5項)。通常、この確認日は、経営者確認書の日付と同一になると考えられます(適用指針BC7項)。

このような特例が定められた理由は、会社法上の計算書類等の評価期間を「公表の承認日(取締役会承認日)」としてしまうと、監査報告書の通知との順序が前後するなど、法的な手続上の懸念が生じるため、従来の実務(監査報告書日まで)と実質的に同様の期間となるよう配慮されました(適用指針BC4項およびBC5項)。

以下、3月決算を前提とした場合のイメージ図によるタイムラインイメージです。

 

4.注記事項

(1)財務諸表の公表の承認

本基準および適用指針により、以下の注記が新たに求められることとなりました(基準第10項)。

  • 財務諸表の公表の承認日
  • 公表を承認した機関または個人の名称(例:取締役会など)

当該注記により、どの時点までの事象が財務諸表に反映されているかが明示されることとなります。

通常は、取締役会になると考えられますが、会計監査人設置会社における特例を前提とした場合、誰が「確認」するのかという論点があります。

この点、企業の経営とガバナンスの構造により異なると考えられるものの、業務執行の権限を有する最高経営責任者(財務報告に関し、最高経営責任者に準ずる責任を有する者として、最高財務責任者を定めている場合には、当該者を含む。)が想定されると考えられます(適用指針BC6項)。

いずれにせよ、自社のガバナンス構造に基づき、「誰が・いつ承認を行うか」というプロセスを明確にしておくことが重要となります。

なお、当該注記は、連結・個別双方の財務諸表でそれぞれ行う必要がありますが(基準BC30項)、期中財務諸表においては、適時性を重視する観点から、国際的な会計基準に合わせて当該注記は求められていません。

(2)重要な開示後発事象

重要な開示後発事象については、下記の事象を注記します(基準第11項)。こちらは監基報 560実1と同様の定めとなります。

  • 重要な開示後発事象の内容及び影響額等
  • 上記影響額の見積りができない場合、その旨及び理由

なお、連結財務諸表を作成している場合に連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一の内容であるときには、個別財務諸表においては、その旨の記載を行うことで省略が可能です(基準第12項)。

5.開示後発事象および開示内容の例示

これまで、監基報 560実1の付表2にて公表されていた「開示後発事象の開示内容の例示」については、本基準において「補足文書」という形で整理されました。

この補足文書が設けられた背景は下記の通りです(「公表にあたって」)。

  • チェックリスト化の回避(機械的に用いられる可能性)
  • 企業の適切な判断を促す(本来、企業が開示目的に照らして判断すべきもの)
  • 基準との切り分け(会計基準として取り入れるには過度に詳細であった)
  • その内容は引き続き周知すべき(関係者にとって実務で広く参考にされる有用な情報)

当該例示の内容については、監基報 560実1から変更はありません。

 

6.適用時期

本基準等は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます(基準第13項)。早期適用の定めはありません。

経過措置として、適用初年度においては、本基準を 2027 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から将来にわたって適用することが可能です。通常は、ほとんどの企業でこの経過措置が採用されるものと思われます。

 

7.まとめ

本基準の適用により、実務では「いつまでの事象を反映させたか」という評価期間の終点を注記を通じて外部に明示することになります。

会計監査人設置会社における「確認日」の特例など、従来の慣行を踏襲しつつも、「公表の承認日」や「承認機関名」の記載といった新たな実務対応も必要となるため、適用タイミングを見据え、補足文書に示された例示も参考にしながら、自社の開示目的を果たすための体制整備を検討が求められます。

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